生前対策

【生前贈与】損をしない!生前贈与の7つの特例と節税のコツ

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遺産相続で損をしないために、生前贈与で家族や親族に財産を渡したい……そう考える人は少なくありません。しかし実際は生前贈与も複雑なシステムで、知らなければ損をしてしまう特例や控除などがたくさんあります。生前贈与で損をしないために、生前贈与とは何か、そして非課税にする方法や、多額の贈与と見なされないためのコツなどをご紹介します。

生前贈与に当たるもの

まずは、生前贈与について調べてみましょう。生前贈与では、どんなものを家族に譲渡することができるのでしょうか。

実は「生前贈与」という専門用語はない

実は、【生前贈与】という法律専門用語はありません。しかし、相続に関して税理士や弁護士に相談に行った場合には、、生前贈与という言葉で十分に通じます。

もともと贈与とは、ある人間から別の人間へ財産を与える契約のことです。つまり互いの同意がなければ成立しない【契約】です。生前贈与も、その点は変わりません。
 
なぜ「生前」贈与と呼ばれているのかというと、相続を視野に入れた、被相続人の「生前」に行う相続のための贈与だからです。

また相続税節税のために生前贈与を行うことは多いのですが、贈与にも税金はかかります。相続税と贈与税、贈与税の控除や特例について詳しく知っておかなければ、かえって損をすることもあります。
 
贈与と相続の違いは、贈与が互いの同意があるのに対し、相続は受け取る側の同意がなくても成立する点です。
 

不動産の贈与

生前贈与ができるもののひとつに、不動産があります。近年、遺産のかなりの割合を不動産が占めるとされており、不動産をどう節税しつつ相続するかは大きな課題のひとつです。
 
平成27年の法改正によって、相続税の基礎控除額が大きく低下しました。またこれまでは、空家でも建物が建っていれば固定資産税などが大きく節税できていました。

しかし空家等対策の推進に関する特別措置法などが施行され、今後は損傷の激しい廃墟化した空き家を放置しておくことが難しくなってきています。
 
不動産の節税のために、贈与という方法を選択する場合、さまざまな特例を利用することで損をしないために回避することができます。

その他の贈与

その他さまざまなものを贈与することが可能です。

・預貯金

・金融商品

・車

・宝石

・貴金属

・美術品

・骨董品 等

また、これらの贈与にも評価額や金額によっては贈与税がかかってしまいます。

相続前3年間の駆け込み贈与は相続と見なされる

相続税節税のために贈与を選んで生前からコツコツ努力をしていたのに、それが相続とみなされてしまうことがあります。

それは、相続前3年間に行った贈与に関してです。一般的に「駆け込み贈与」と呼ばれ、相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の課税価格に加算されます。

とはいえ、人の運命はいつ何が起きてもおかしくありませんよね。そこで、相続・贈与に関することはできるだけ早めに話し合いをスタートしておきたいものです。

生前贈与を非課税にするための7つの特例

生前贈与を非課税にするために役立つ、7つの控除・特例をご紹介します。これらをそれぞれ理解しておくことで、生前贈与をよりお得に活用できるようになります。

基礎控除

生前贈与を非課税で行うために、知っておきたい基本の控除です。生前贈与というより、贈与そのものの基礎控除です。

年間110万円までの控除
贈与は、基本的に年間110万円までは基礎控除として贈与税がかかりません。これは一年ごとの控除なので、翌年も110万円までは贈与税がかかりません。
贈与税の基礎控除は、相続税同様「受け取る側の人間」にかかります。そのため、受け取る側の人が、父からも110万円、母からも110万円の贈与を受けると、結局220万円贈与されたことになり、控除額を大きく上回ってしまいます。
控除額を上回った分に関しては贈与税が課されます。またこの基礎控除を使って毎年贈与を行うことを、【暦年課税】と呼んでいます。

相続時精算課税の特例

【相続時精算課税制度】とは、一般的な贈与の基礎控除額をはるかに超えた、2500万円までが基礎控除となる制度です。

これは60歳以上の親や祖父母から、20歳以上の子や孫に贈与する時にしか適用されません。

・2500万円まで、贈与税の課税額控除がある
・相続時精算課税制度を一度申請すると、その後暦年課税には戻せない
・相続時精算課税制度を利用すると、贈与税は相続税支払い時に精算される事になっている
・この制度を用いると、相続税は贈与税と相殺される
 
贈与税の控除額が一気にアップしたように見える制度ですが、実は相続で受け取った金額にかかる相続税と深く関わっています。

精算時に相続税と贈与税双方を支払うダブル納税を防ぐ特例ではありますが、双方を払わなくても良いわけではありません。

相続財産の計算をして、結果的に相続税の控除額を上回っていれば、相続税の支払いが発生します。
 
この制度は、できるだけ早く親の財産を次世代へと移転させるために設けられており、節税のための制度とはちょっと違います。そのためよく考えて活用しなければ、かえって多くの税金を支払うことになってしまいます。
 
また一度暦年課税制度を相続時精算課税制度利用に切り替えると、暦年課税制度に戻すことができません。この点も注意が必要です。

住宅取得資金等の贈与特例

【住宅取得資金等の贈与特例】とは、住宅を取得するための資金贈与に関して、期限内に申告書を提出すれば、一定金額まで非課税になるという特例です。
ただしこの特例には今のところ期限が設けられています。期限内に契約締結日を持ってこられるようにする必要があります。
期限内の申告書提出を忘れてしまう人が非常に多いので注意しましょう。
 
住宅取得資金等の贈与特例の非課税限度額と契約締結日の期限(消費税率10%未満)

契約締結日 省エネ等住宅 その他の住宅
2016年1月1日~2020年3月31日 1,200万円 700万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,000万円 500万円
2021年4月1日~2021年12月31日 800万円 300万円

 
住宅取得資金等の贈与特例の非課税限度額と契約締結日の期限(消費税率10%)

契約締結日 省エネ等住宅 その他の住宅
2016年1月1日~2020年3月31日 3,000万円 2,500万円
2020年4月1日~2021年3月31日 1,500万円 1,000万円
2021年4月1日~2021年12月31日 1,200万円 700万円

 
消費税率が変わると非課税限度額もアップします。今後の消費税率値上に注意しておきたいですね。
 
その他にも条件があります。
 
・父母や祖父母といった直系尊属から直系卑属の子・孫への贈与であること
・贈与を受ける側(卑属)の年齢が贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上
・贈与を受けた年の、贈与を受ける側の所得が2,000万円以下であること
・住宅取得のための資金であること
・贈与を受ける側は、過去に住宅取得資金の贈与税非課税措置を受けていないこと
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに、その住居に住むこと
・住宅の売り主や工事の発注先が配偶者・親族ではないこと
・取得する住宅は床面積50㎡以上240㎡以下で、半分以上が居住用であること
・新築もしくは耐火建築物なら築25年以内、それ以外なら築20年であること
・一定の耐震基準を満たしていること
 
条件がかなり多くて厳しいかもしれません。上記の条件・契約締結日の期限をしっかりチェックして活用するようにしたいですね。

配偶者間の不動産贈与の控除

【配偶者間(夫婦間)贈与の控除】は、おしどり贈与とも呼ばれています。配偶者間であれば、贈与であっても2,000万円まで非課税という制度です。
夫婦間で居住用の不動産や、その購入資金を贈与する場合、2,000万円まで非課税になります。
この非課税控除は暦年贈与と併せて活用できるため、最大2,110万円まで非課税にすることが可能です。
 
こちらの控除にも条件があります。
 
・同じ配偶者からであれば、妻からでも夫からでも構わないが、1回に限る
・婚姻期間が20年以上ある
・贈与された側は翌年の3月15日までにこれに関わる住居に居住しなければならない
・もし贈与税がかからずに済んだ場合でも申告をしなければ非課税にならない
・不動産取得税・登録免許税は贈与扱いで発生する

生活費は税法上贈与対象にならない

生活費は、税法上では相続や贈与の対象ではありません。そのため、生活費として金銭を渡すことがあっても、そこに贈与税が課せられることはないのです。
ただし、それはあくまでも「生活費」の範疇内になります。一般的に見て生活費の範疇を大きく超えていた場合は、贈与と見なされてしまいます。
また生活費を数年分、まとまった額で贈与した場合は、使いきれなかった分の金額に贈与税が課税されることになっています。
 
大学生になって独り暮らしをする子どもに生活費を送金する場合などは、大金をまとめて送るのではなく、ある程度の期間分に分けて送った方が良いですね。
またお金に余剰分ができた時、子どもが不動産や株式購入、FXや仮想通貨などに生活費としてもらったお金を使用すると、贈与と見なされてしまいます。
預貯金にすることも贈与と見なされるため、定期預金を組むことなども危険です。やめておきましょう。
 
多少の額であれば特に問題はありませんので、万一の時のためにそのままにしておきましょう。多額の場合は翌年の学費に充てたり、留学や資格専門学校の費用に充てたりすれば大丈夫です。
 
理由があって多額のお金を一括で教育費として贈与したい場合は、教育資金の一括贈与特例(下記参照)を利用しましょう。

教育資金の一括贈与に関する特例

【教育資金を一括贈与に関する特例】は教育資金を一括贈与される場合に、非課税になるという嬉しい制度です。現代は教育資金が非常に高いので、ありがたいですよね。
 
父母や祖父母といった直系尊属から、教育資金を一括で贈与された場合、1人当たり1,500万円までは非課税になります。
この資金のうち、学校に支払う以外の「塾代・お稽古事。習い事」などに支払う場合は、500万円までが非課税です。
 
その他にも条件があります。
 
・2019年3月31日までの期限だったが、延長が決定(詳細不明2019.4.12現在)
・贈与された資金は金融機関に教育資金口座を開設して管理する
・所定の書類を金融機関経由で税務署に提出する
・お金を引き出した際は教育費の領収書を金融機関に期限以内に提出する

結婚子育て資金贈与の特例

【結婚子育て資金贈与の特例】は20歳以上50歳未満の人が、結婚や育児に関する資金を親や祖父母などの直系尊属から贈与された場合、受け取る側1人につき1,000万円まで非課税になります。

結婚のための資金としては300万円までが非課税になります。結婚・子育てのための資金を、前もって一括で贈与できる点が、他の贈与とは異なっています。

教育資金の一括贈与に関する特例とよく似ている特例なので、あわせてチェックしておきましょう。
 
その他にも条件があります。
 
・2019年3月31日までの期限だったが、延長が決定(詳細不明2019.4.12現在)

・贈与された資金は金融機関に結婚・子育て資金口座を開設して管理する

・所定の書類を金融機関経由で税務署に提出する

・お金を引き出した際は教育費の領収書を金融機関に期限以内に提出する

多額の生前贈与と見なされないためのコツ

分割贈与には、規定や明確な線引きがないため、「これをしなければ大丈夫」という確実な方法がありません。どうすればより安全かというコツをご紹介します。
 

「節税のため」ではなく「合理的理由のため」になることが重要

これまでご紹介した特例や控除に、暦年贈与を組み合わせることで、大きな節税になります。

 

しかし暦年贈与の方法によっては、「結果的に多額の贈与(相続)を分割しているだけだよね」と判断されてしまうことがあります。

そのため、「多額の相続を分割しているだけ」「結果的に多額の贈与・相続になる」「贈与税・相続税の対象になる」と判断されないコツを知り、実践することが重要です。

 

つまり、「節税や課税回避のため」と判断されないよう、「合理的な理由」で行っていることを立証していくことが必要になるのです。

具体的な対策をご紹介していきますので、できるものを組み合わせていきましょう。

毎回その年の分だけの贈与契約書を作成する

贈与は口約束でも契約になりますが、贈与契約書を作成すると基礎控除が適用されたときも安心できます。

毎年、その年の分(基礎控除分110万円以下)の贈与契約書を取り交わし、金融機関の通帳と印鑑を子どもなど送った相手に管理させると良いでしょう。

相続時精算課税制度と暦年課税を両親から分けてもらう

結果として大きな額の贈与を受ける場合は、両親で相続時精算課税制度と暦年課税を分けて行ってもらうという方法もあります。

受け取る側がどの制度でいくらもらったか、によって贈与税がかかるので、暦年課税を両親から受けても、結局は110万円の非課税の壁を超えることはできないからです。

贈与の日を毎年ずらす

贈与してもらう日を、忘れないように決めているという方もいると思います。子どもの誕生日など、記念日にしている方も多いでしょう。

しかし毎年同じ日に贈与があると、定期的な多額贈与と見なされる可能性があります。そのため、あえて贈与の日を毎年ずらし、アトランダムに贈与するようにしましょう。

金額を110万円に揃えず、たまに超過させる

金額も110万円にそろえて毎年確実に贈与していると、定期的な多額贈与と見なされやすくなります。

ある年は100万円だったり、ある年は108万円だったりというように、わざと金額をバラバラにしておくこともひとつの手段です。

またたまに115万円など、贈与税が大きく発生しない程度に超過させておくと、定期的・計画的贈与と見なされにくくなります。

銀行振込を活用してわざと履歴をのこす

行政側が「怪しい」と判断するものは、履歴が残っていないもの、つまり証拠が隠滅されているものです。

銀行振込を活用して履歴をのこすことで、計画的・定期的な多額贈与と見なされる危険性を低く抑えることにつながります。

生前贈与で損をしないために

生前贈与で損をしないためには、ご紹介した7つの特例や控除を上手に使う事や、暦年課税制度を賢く活用することが大切です。

また相続時精算課税制度を利用するときも、建物など減価償却するものは相続時精算課税制度を用いてはなりません。

この制度は、適用した年の価格が税金計算に使用されるため、いずれ値を落とすものの贈与には不向きなのです。
 
不動産を生前贈与したい場合など、今後地価が高くなると予想される土地には相続時精算課税制度を活用して、損をしない生前贈与をコツコツ行っていきましょう。