生前対策

【生前贈与】もめない相続の準備!法定相続人以外に財産を残すには?

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相続は家族同士、親族同士がもめる最大の理由のひとつです。そこに親族以外の人間が入ってくれば、なおさら事態は紛糾します。相続でもめないために生前贈与でできることはあるのでしょうか。また法定相続人以外へ財産を遺したい時、どうすれば良いのでしょうか。

生前贈与は財産贈与契約!赤の他人にも財産をわたせます

生前贈与は、人間同士の財産贈与契約です。そのため、我が子や配偶者だけでなく、赤の他人と契約を交わしても罪には問われません。

公文書として認められた遺言書があれば誰にでも財産を渡すことができる

公文書として認められた遺言書があれば、財産を家族や親族以外にも渡せると考える方もいるでしょう。

たしかに公文書として認められる公正証書遺言や、家裁できちんと検認を受けた秘密証書遺言・自筆証書遺言があれば、財産を遺すことは可能です。

しかしその際、遺言書は最終的に法定相続人となる家族や親族みんなの前で公表されます。そのため、こっそり他人に財産を遺すことは、遺言書では困難といえます。

また相続権を持つのが血のつながりのある自分たちだけでなく、他人も混ざっていると分かれば、家族や親族から大きな反感を買うことも確実と言えるでしょう。

遺言書があっても、全ての財産を法定相続人以外にわたすことはできない

さらに遺言書で「すべての遺産を他人であるAに譲る」と明記しても、それは果たされることがありません。

遺言書は故人の遺志として、相続の場では大変強い効力を持ちます。しかし法定相続人には立場を守り生活を維持するための【遺留分】という権利が認められているからです。

それでは、法定相続人とは、故人とどんな関係性を持った人々なのでしょうか。法定相続人について調べてみましょう。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。
 

 

配偶者
配偶者がいる場合、どんなケースであっても配偶者には相続権が発生します。
 
第1順位
直系の子ども・養子縁組をした子どもと、直系の孫(直系卑属)
 
第2順位
直系の両親と、その祖父母(直系尊属)
 
第3順位
兄弟姉妹と、その子ども(甥や姪)

 
まずは配偶者と第1順位にあたる人が相続人となります。もしも第1順位に当たる人が1人もいない場合は、配偶者と第2順位の人々が相続人になります。
第2順位に当たる親族も全くいない場合は、配偶者と第3順位の人々になります。
 
法定相続人は、【配偶者】+【第1順位~第3順位のうち順位が高い立場の親族全員】となります。

妻の子ども以外でも養子縁組や認知をすれば相続権が発生する

妻の子ども以外でも、養子縁組をした子どもがいれば、実子と同じ権利を有することになります。

また、前妻の子どもや不倫相手の子どもなども、認知をすることで妻の子どもと同じ、また嫡出子と同じだけの権利を持つことができます。

 

昔は、非嫡出子と嫡出子では、相続時の権利が異なる時代もありました。しかし認知がされていれば、同様の権利になります。しかしそれを面白く思わない人もいます。

認知された非嫡出子が相続放棄を迫られても、それが無理やりの脅迫であれば、相続を放棄する必要はありません。法律に守られた権利を主張することで、相続できます。

法定相続人は民法で定められた分割の目安がある

法定相続人は、財産分割の割合が民法によって目安が定められています。遺言書で故人の遺志が示されていない場合は、以下のように分割されるのが一応の目安です。
 
相続の分割方法

相続人 財産分割の割合
配偶者のみ 1/1
配偶者+第1順位 配偶者1/2 1/2÷第1順位人数
配偶者+第2順位 配偶者2/3 1/3÷第2順位人数
配偶者+第3順位 配偶者3/4 1/4÷第3順位人数

 
遺言書で分割の割合が定められている場合は、この限りではありません。
しかし全財産を他人に相続させたいといった遺言がある場合は、法定相続人に遺留分減殺請求権が発生します。

遺留分と遺留分減殺請求権

遺留分とは、法定相続人に定められている遺産の相続分割分のことです。遺言書に故人の遺志が記されていても、遺族の生活を守るために決められた相続分になります。
その遺留分を遺言書によって侵害された場合、法定相続人には遺留分を請求するための遺留分減殺請求をする権利があります。
 
遺留分と遺留分減殺請求権

相続人 本来の分割財産の遺留分
配偶者のみ 1/2
配偶者+第1順位 配偶者1/2 1/4÷第1順位人数
配偶者+第2順位 配偶者1/3 1/3÷第2順位人数
配偶者+第3順位 配偶者1/2 なし
第1順位のみ 遺産全体の1/2÷第1順位人数
第2順位のみ 遺産全体の1/3÷第2順位人数
第3順位のみ なし

 
遺留分は遺族の生活を守るための制度です。そのため、特別に高齢になると想定される両親・祖父母など第2順位(直系尊属)の遺留分も、1/3としっかり確保されています。

ただし、同じ理由から兄弟姉妹とその子孫にあたる第3順位の親族については、遺留分・遺留分減殺請求権は存在していません。

もめないための法定相続人以外への財産贈与

法定相続人だけで遺産分割協議を行っても多くの場合はもめるものです。そのため、財産贈与を法定相続人以外の人へ行うと、かなりの確率でもめると考えられえます。そこで、法定相続人以外への財産贈与をもめずに行うためのコツをご紹介します。

財産を所有する本人と、財産を分与したい相手で生前に契約・贈与を

まずは、やはり財産を所有している本人が元気なうちに、自分のしっかりとした意志で財産を分与したい相手と贈与契約・実際の贈与を行うことが、最ももめない方法でしょう。

遺産として遺したいと考えても、遺留分は法律に守られた分与なのでその権利を侵害することはできません。

また自分が他界した後に、法定相続人と壮絶な争いをさせることも本意ではないでしょう。それならば、遺産として遺すよりも、生前に契約を交わして贈与した方が安心ですね。

多額になる場合、節税のため分割贈与がおすすめ

多額の贈与になる場合は、一度に贈与してしまうと相手に大きな贈与税の負担をかけてしまうことになります。

そのため、できれば法定相続人以外の人への財産贈与は、計画的に長い時間をかけて行うことを考えたいですね。

 

ただし分割贈与には節税以外の合理的な理由が必要になります。その点は税理士と相談し、税務署に受け入れられる理由を考えなければなりません。

預金通帳は相手名義で作り、通帳・印鑑ともに相手が管理・使用を

預金通帳は、相手の名義で作ってもらい、通帳・印鑑ともに相手に管理・使用してもらうようにしましょう。

相手の名義の通帳・印鑑・カード類が手元にあるまま、急に万一のことがあった場合、家族が大騒ぎになってしまうかもしれません。

事の次第を説明しようにも、本人は他界してしまっているのでできません。また一切使った形跡がないと、税務署に怪しまれ贈与自体否認されてしまうケースもあり得ます。

 

預金通帳・印鑑・カード類はすべて相手に自分で管理してもらい、被相続人は完全に手放します。関係するものは一切家の中には残さないようにしましょう。

不動産は相手名義に変更して登記する

不動産を相手に譲りたいという場合は、自分が元気なうちに名義を相手の名前に変更して、正式に登記を行います。

登記は法律上の義務ではありませんが、登記を行うことで持ち主を社会的に公示することになります。
 
また登記をしていなければ売却や土地の貸し出しなどもできません。不動産を譲る場合は登記まできちんと行うと、後々トラブルになりにくいでしょう。

家族の誰もが知っている土地はなるべく避けた方が安全ですが、そうもいかない場合は、時期をみて名義変更したことを家族に伝えておくと、他界後の紛争をある程度おさえることができるかもしれません。

遺族(家族)が絶対に反対すると分かっている場合は遺言書にも書かない

家族(遺族)が法定相続人以外の人への財産分割を絶対に反対すると分かっている場合は、そのことをあえて家族に伝えないということも方法のひとつです。

遺言書を遺す場合は、すでに財産を法定相続人以外へも分与していることは書かず、法定相続人以外の贈与相手にも伏せておくように伝えると安心でしょう。

振込先が同一人物である通帳などは、家族の目に触れないようにする

贈与のための振込に使用している通帳や、契約書の類は、家族の目に触れないように保管しておくことも忘れてはいけません。

生前に家族の目に触れると、そのまま喧嘩や争いが始まってしまうことでしょう。亡くなった後は、贈与の相手の手に渡るように、ある程度まとめて封筒に入れ、宛名を書いて切手を貼った状態で保管しておくという方法もあります。

遺言書を作成して法定相続人以外に財産を遺すとき

遺言書を作成して法定相続人以外に財産を分与せざるを得ない場合は、どのように手続きをすればよいのでしょうか。
 

付き合いがあってもなくても法定相続人に遺留分の権利は発生する

現在家族と縁が切れていたり、付き合いが無くなって完全に音信不通になっていたりしても、法定相続人である以上、家族や親族には遺留分の権利が発生します。

たとえ法定相続人には一円も遺したくない、法定相続人以外の人にすべての財産を贈与したいと遺言書に書いても、それは遂行されません。

遺言書は公正証書遺言を選択する

遺言書は3種類あり、それぞれ手間や費用、効力が異なります。法定相続人以外にも財産を遺したい場合は、必ず公正証書遺言を選択しましょう。

3種類の遺言書は以下の通りです。
 

公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。公証人のほか、証人2名を必要とします。

公正証書遺言は、公証役場で正本を保管してもらえます。手元には複製が残り、相続が発生した後に遺族がその中身を見て気分を害しても、正本は保管されているので破損されることはありません。

また公証人に作成してもらった公正証書遺言は、そのままで遺言書としての効力を持ちます。秘密証書遺言と自筆証書遺言はそのままでは遺言書としての効力を持ちません。

また内容的に必ずもめそうな遺言書を遺す際は、遺言執行者に事情をよく知る税理士や弁護士を指名するなどの考慮も必要です。

 

秘密証書遺言
秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を公証役場へ持ち込み、内容は伏せたまま公証人と証人に立ち会ってもらって封をする遺言書です。

内容を誰にも知られることはありませんが、遺言書自体は自分で管理する必要があります。家族に同意を得られないような内容であれば、貸金庫や弁護士など、信頼できる場所に保管を依頼することをお勧めします。

 

自筆証書遺言
自筆証書遺言は、最も簡単でお金もかからない遺言書です。自筆で書かなければなりませんが、書式に誤りがなく、署名捺印もあれば多くは認められます。

秘密証書遺言と自筆証書遺言は自分で管理する必要があること、遺言書として認められるためには、開封しない状態で家庭裁判所の検認を受ける必要があることなど、少々面倒な手続きが必要です。

家族が万一遺言書の存在に気づき、その内容に怒りを覚えて破棄したり、隠したりすると、家族は私文書破棄・偽造・変造の罪に問われ、さらに相続の資格を失うことになります。

 
やはり遺言書を遺すより、家族および遺贈したい法定相続人以外の人と元気なうちによく話し合い、みんなが納得できる道を探った方が、自分の意志を確実に伝えられるのではないでしょうか。

本妻がいる場合の不倫相手への遺贈は理由・内容によって認められることも

妻や妻との実子はいても、ほとんど縁が切れているという家庭も珍しくはありません。ろくに口も利いていない仲だけれど、財産があるばかりに離婚できないという話もよく聞きます。

さらに妻とは別の女性と同棲関係にあるという方もいますね。そんな時は、看取ってくれる女性に遺産を渡したいと思うのが情でしょう。

しかし遺言書には「公序良俗に反していないこと」という有効条件があります。不倫は道徳的に認められていないため、不倫相手への遺贈は無効になる恐れがあります。
ただし最高裁の前例で、不倫相手に遺贈する旨の遺言書が有効になったケースがあります。
 
・被相続人は妻子と家族としての実態がある程度失われていた
・妻子とは別居し、不倫相手と長年同棲していた
・不倫相手の存在は妻子にも知られていた
・遺言書は有効なもので、不倫相手の心を留めおくために作成されたものではなかった
 
上記の理由などによって、遺言書が不倫関係を継続させるために書かれたものではなく、自分の死後に不倫相手の生活が守られるために書かれたと判断されたのです。

前例がある場合、裁判は有利になると言われていますが、それでも最高裁まで争う裁判にはお金も時間もかかります。

できるだけ法定相続人の気持ちを逆なでし、「どうせ遺留分があるんだからいいだろう」といった内容の遺言書は避けた方が、のちの泥沼の争いを防ぐことができるでしょう。

相続権は故人の生前に放棄することはできない

逆に「ほとんど親らしいことをしてやれなかったからこそ、我が子に遺産を渡したい」という場合もありますよね。

しかし子どもがわだかまりを持っていたり、他の親族と相続争いになることが予想される場合は、財産放棄をされてしまう可能性があります。

財産を遺してやりたいという気持ちを無下にされることは怖いものです。しかし、生前に子どもから財産放棄を法的に突き付けられる恐れはありません。

財産の所有者が存命している間は、法定相続人に財産放棄をする権利は発生しないからです。

財産相続は所有者の死亡によって発生するため、まだ発生していない相続に対する放棄権は存在しません。
 
子どもに対する情でつらい思いをしているという場合は、間に誰か信頼できる人物に入ってもらい、話し合いをしてみてはいかがでしょうか。

大切な家族とのきずなを結びなおすことは、終活の中でもとても実りある活動になります。第二の人生が、より豊かで楽しく、生き甲斐の感じられるものになることでしょう。

また他の親族と相続争いが起きて可哀想だと判断した場合は、子どもの遺産の取り分や分割について、遺言書で明記しておくと良いでしょう。

法定相続人以外への相続はもめやすい!生前に契約・贈与を

法定相続人以外の人への相続は、家族・親族の間のもめごとの元になります。法定相続人以外の人に財産を譲りたいと思うということは、その人をよほど大切に思っているということですよね。

しかし遺言書で遺産を譲るという事を意志表示すれば、自分が他界した後で、大切な人と自分の家族・親族の間で壮絶な相続争いが起きる可能性が高いでしょう。
 
大切に思う人を守りながら、譲りたい財産を確実に渡したいのであれば、自分が生きているうちに贈与契約を結び、できれば贈与して完全に手放す事が一番確実です。