生前対策

生前贈与された不動産、損をせずに売却するために知っておきたいこと

  • 生前対策

贈与された不動産があるけれど、固定資産税もかかるし管理も大変なので売却したい、というケースは少なくありません。また「不動産で贈与されても困るから、すぐに売却してもいい?」と子どもから相談されるケースもありますよね。贈与後の不動産を売却する時に注意したいのは、どういったポイントなのでしょうか。

不動産を生前贈与されるということ

不動産は大きな財産のひとつです。そのため、相続税の節税のためにさまざまな工夫がなされるようになっています。

不動産はありがたくも厄介な財産のひとつ

不動産は、大きなお金を生む可能性を秘めている分、取り扱いに大変気を遣い、しかも維持するにはお金が必要になる、ある意味生き物のように手のかかる財産です。
たとえば、不動産はその価値が大きく変動する可能性があります。開発が進む地域に指定されれば価値が上がり、過疎化が進めば価値が下がることもあります。
 

 
東京の一等地である銀座の1㎡と地方の田舎の1㎡では価格が全く異なりますが、それでもある程度の広さで取引されるため、評価額が大きくなります。
 
さらに、更地で持っていると固定資産税などが非常に高くなります。建物が建っていると税金は安くなりますが、今度は建物の維持費がかかります。
それさえ放置しておくと、新たに制定された「空家等対策の推進に関する特別措置法」にひっかかり、特定空き家に指定され、結局固定資産税の減税措置もなくなってしまいます。
 
相続しても高額のため相続税や贈与税の対象になりやすく、持っているだけで固定資産税や維持費がかかり、また管理にも手間がかかる、ありがたくも厄介な財産といえます。
そのため不動産は相続税の節税対策の対象となることが非常に多いのです。何の手も打たずに贈与されたり相続すれば、贈与税や相続税が大きくかかってきます。
 
さらに辺境地に、放置されている田畑や山林等があり、子孫は所有していることすら知らなかった、という場合もあります。
辺境地の田畑や山林などは非常に売りにくい土地で、買い手も見つからず、自治体も寄贈すら受け入れてくれず、放置しているしかない、という土地もあるのです。

不動産を贈与・相続される前に相談しておきたい税理士

不動産を贈与したり、相続されたりする前に、今所有している人も、これから譲られる人も相談しておきたいのが、相続税に強い税理士です。

現在、相続発生時の相続税基礎控除は、最低ラインが3000万円ときまっています。以前はもっと高額でしたが、近年大幅に引き下げられてしまいました。
 

基礎控除額の計算方法
3000万円+(600万円×相続人の人数)

 
現在は少子高齢化が進んでいるため、相続人が配偶者だけだったり、配偶者と子ども1人しかいなかったりというケースも珍しくありません。中には相続人が全くいない場合もあります。

家族が少ない場合、基礎控除額は3600万円や4200万円となります。東京の23区内に土地と家を所有し、ある程度の貯金もある一般的な家庭であっても、相続税の対象者になり得る時代がやってきたのです。
 
基礎控除額が引き下げられ、相続人も少ないケースが増加傾向にある今、一昔前と比較すると、相続税申告を経験する人が確実に増えてきています。

専門家でなければ太刀打ちできないケースも珍しくないのが相続

逆に、何代もさかのぼらなければならない相続を経験する人も少なくありません。親の兄弟姉妹が相続人になり、昔のことなので兄弟姉妹の数が非常に多く、さらにそのほとんどが高齢となって他界している場合です。

その際、甥や姪、つまり一代先までは代襲相続が認められているため、兄弟姉妹全員の甥・姪にまで相続権が発生することになります。

場合によっては相続人が数十人に達してしまい、しかも事情があって親族としての付き合いはほとんどなく、住まいも遠方だったりすると、相続の手続きは混乱を極めます。
 
さらに基本として、相続税の申告は相続が発生してから10か月内に行うと定められています。しかしこのように煩雑な相続手続きを門外漢1人で行うことは、到底無理な話といえます。

そこで、相続が発生する前、もともと財産・不動産を所有している方が意識・身体ともに健康で元気なうちから、相続税に強い税理士に相談することをお勧めしたいのです。

相続・贈与の節税対策は早ければ早い方が良い

相続や贈与に関わる節税対策は、早ければ早い方が良いと言えます。その理由もいくつか挙げられます。

理由1: 所有不動産の棚卸に時間と手間がかかるから

まずは、自身の所有している財産の把握と整理、つまり「棚卸」に大変な時間と手間がかかるからです。

例えば、みなさんはいくつ銀行口座を持っているでしょうか。たった一つしか開設しておらず、すべてその口座で賄っているという方はほとんどいないと思います。

多くの方は何通もの預金通帳を所有しており、いくつもの銀行口座を管理していることでしょう。しかし、こまめにすべての通帳の記帳はしていますか?

なぜかほとんど使っていない銀行口座があったり、何年も休眠させている定額預金があったり、統合されて今では何という名前になっているのか分からない銀行の口座もあるかもしれません。

それらをすべて整理し、現金預貯金額を正確に把握するだけでも、実はかなり大変な作業となります。
 
それが不動産になると、ますます大変な作業です。そもそも、自分が所有している土地がどこにあるのか、すべてを把握していない、ということもざらにあります。

番地で土地の数を把握していたら、実際は分割されていて一つの土地と思っていた土地が三つの土地に分かれており、登記は祖父の代で止まっていた、ということもあり得ます。

そういった不動産財産の棚卸は、面倒でも自身が元気なうちにすべてきちんとやり遂げておかなければ、後の相続で必ずもめることになります。

土地の境界線を明らかにして登記などを行う土地家屋調査士の言葉に「杭を残して悔いを遺さず」というものがあります。

不動産の贈与や相続を考え始めたら、まずは土地の境界線を明らかにして自分の財産を把握し、棚卸作業を行いましょう。

理由2: 相続税の節税のために贈与や特例をいろいろ活用できるから

相続税の節税のために、贈与を活用する方法はいろいろあります。たとえば毎年110万円まで非課税になる暦年贈与や、2500万円まで非課税になる相続時精算課税制度などです。

相続時精算課税制度は、多額になると相続の際に相続税と相殺ではありますが清算することになります。でも暦年贈与を計画的に使う事で、多額のお金を少しずつ譲り続けることも可能です。

また住宅取得資金等贈与の特例や、結婚・子育て資金の一括贈与特例など、さまざまな特例を活用することで、子どもの人生の様々なシーンを助けながら、相続につなげていくこともできるのです。
 
小規模宅地等の特例という制度を利用することで、配偶者は居住地であれば80%、その他の用途でも大きな節税が可能になります。

配偶者であれば、居住地に住んでも住まなくても、相続後に売却しても節税になるため、この制度について学んでおくことはとても重要と言えます。

理由3:贈与は契約なので、相続人の同意を得なければできないから

相続は不動産所有者が亡くなった後に発生しますが、生前贈与は契約です。そのため、贈与したい方と、贈与を受ける相続人、双方の同意がなければ成立しません。

そのためには、所有者が一方的に相続についてあれこれ考えるのではなく、税理士に相談しながら相続人の意志をその都度確認して、契約をしていく必要があります。

そのためには相続人にも所有財産のことや不動産の管理、売却、節税について少し学んでもらわなければなりません。これにもある程度の時間が必要です。
 
さらに所有者が亡くなる3年前から始まった贈与は、相続税逃れのための駆け込み贈与と見なされ、相続税の対象となる規定もあります。そこで、長期的に相続人の理解を得て、協力しつつコツコツ進めていく必要があるのです。

理由4:相続人全員と所有者が納得できる円満解決には時間がかかるから

所有者と相続人全員が納得できる、みんなが笑顔で判を捺せる円満解決には、やはり時間がかかります。

相続人も大人になり、配偶者や子どもを得れば、親の思う通りには人生設計図を描かなくなります。それぞれが築いた家庭の事情が生まれるからです。

そのため、時にはそれぞれの相続人と、時には相続人全員を集めて、腹を割って話し合わなければならないシーンが何度も訪れるでしょう。

話し合う中で気持ちがすれ違うことも起きるでしょう。しかし、親が求めるのは子の豊かな幸せでしかない、ということを何度も伝えていけば、解決の道は拓かれます。

そのために、よりよい方法やよりお得な解決策を提示してくれる、相続に強い税理士税理士に相談することは、大きな近道になるのです。

理由5:相続を気にせず余生を楽しむ時間を少しでも増やすため

身体も動かなくなり、意志の疎通も難しくなってから、相続のことを思い悩まなければならない状態はとても歯がゆく、悔いが残ります。

しかし相続のことを相続人ときちんと話し合い、円満に解決まで歩み切り、しっかり遺言書として形にしてしまえば、後々の心配事は激減します。

そうなれば、相続や子ども達の争う将来のことを心配せずに、思い切り第二の人生を謳歌することができます。せっかくの人生、悩むより行動した方が楽しいですよね。

贈与された不動産の売却方法

贈与された不動産を売却する際には、どうすれば損をせずに済むのでしょうか。その方法についてまとめてみました。不動産の売却方法については、「【不動産相続】相続後の不動産を売却するために知っておきたいこと」も参考にしてくださいね。

贈与された不動産を売却したいのであれば登記を行う

贈与された不動産を売却したい場合は、登記を行う必要があります。登記は所有する不動産のある地域を管轄する、法務局で行えます。

また登記関係の手続きは煩雑なので専門家にお願いしたい、という場合は、司法書士や土地家屋調査士などの国家資格を有する専門家に依頼します。

土地家屋調査士は、自分の持っている不動産の境界線が分からない場合などにも調査を依頼できるため、不動産相続には欠かせない専門家です。

登記は法的に定められた義務ではないのですが、登記をしなければ売却ができません。そのため、所有者は贈与前に登記を見直しておき、相続人も登記をきちんと行いましょう。
 

不動産を売却する際に使用できる特例等

不動産を売却する際には、使用できる特例がいろいろあります。
 

【3000万円の特別控除】

従来「居住している家や土地」が対象でしたが、2016年4月から、相続した実家が空き家になっている場合も受けられるようになっています。

相続した実家が条件を満たしていれば、売却した価格(譲渡所得)に対して非課税になるという制度です。ただ条件がたくさんあるので注意しましょう。
 
・一戸建てであること
・旧耐震基準以上で建築されていること
・相続の直前まで被相続人が居住していたこと
・2013年1月2日以降に相続が発生していること
・相続開始から3年以内の売却であること
・譲渡価格が1億円以下であること
・相続後はずっと空き家になっていたこと
・現耐震基準をクリアしていること
・現耐震基準をクリアしていない場合、解体して更地にしてあること
・現耐震基準をクリアしていない場合、耐震リフォームを施してあること
 

【小規模宅地等の特例】

配偶者が不動産を相続した場合、それが宅地用地であれば330㎡までは80%の控除を受けられるという、非常に大きな特例になります。

これは宅地用地だけでなく、事業用地や貸付用地でも特例を受けることができます。
 
・事業用事業用…400㎡80%減
・貸付用…200㎡50%減
 
この特例は、不動産の評価額の段階で、80%~50%減額してもらえるというものです。また、非常に嬉しいことに基礎控除である3000万円+αも併用できます。

配偶者が相続した場合なら、相続時に別居していて配偶者本人が住んでいなかった場合でも、相続後売却した場合でも適用されます。

【相続税の取得費加算の特例】

相続から3年10か月以内に売却することで、相続税の取得費加算の特例の対象になります。相続税額の中から一定額を、譲渡所得計算時の取得費に加算できるという特例です。

ただし、この特例は【空き家に関わる譲渡所得の3000万円特別控除】とは併用できないので注意が必要です。

不動産の売却に関しても引き続き税理士に相談しましょう

不動産の売却に関しても、相続に引き続き税理士に相談しましょう。生前贈与の段階からずっと相談し、手続きをしている税理士であればなおさらです。

相続が発生する前から、相続した後の不動産をどうするか、土地はいつ、どうやって売却するかなどを相談しておくと、必要な手続きや期限を忘れずに済みます。

土地・不動産の贈与後売却する際は、早めに税理士に相談を

土地や不動産の贈与があったあと、売却したいと思った時は早めに税理士に相談しましょう。できれば生前贈与を考え始めた時から相談することで、より良い方法や対策を考えてくれます。
 
また贈与を考えている場合は、贈与する相手とよく話し合って決めましょう。相続人が複数存在し、相続になると紛争になる可能性がある場合は、最初からきちんと話し合い、相続人同士、被相続人同士の気持ちを確認し合って、家族同士の争いを回避しましょう。